2017/01/31

移植患者は糖尿病になってしまう!?(NODAT(New oncet diabetes after transplant) )

腎移植を行う原因疾患として糖尿病性腎症によるものは非常に多い。
移植前に糖尿病の管理は行われてある程度は安定しているが、移植後も糖尿病の管理をしていかなくてはならない。

では、腎炎で腎不全になった症例に移植をした場合に血糖に関してのケアは全くしなくていいかということに関しては、答えはNoである。
今回、そのことに触れたいと思う。

移植患者に新規に糖尿病が起こることがあることを知っていなくてはならない。
NODAT: New oncet diabetes after transplant
という。これは2011年にReviewがある

移植後半年を過ぎてから非糖尿病のレシピエントの約1/3が持続的な血糖異常が生じると言われている。急性と慢性のNODATに分類されており、
・急性NODAT:移植後3−6ヶ月以内に発症、免疫抑制剤(カルシニューリン阻害薬)に伴うものが多い。インスリン分泌低下のため、インスリン投与が必要になる場合も。
・慢性NODAT;移植後半年〜数年後に発症。過食や肥満によるものが多い。インスリン分泌は比較的保たれているので、経口剤などの内服で管理可能。

血糖異常は移植腎機能や生命予後にも影響を与えるため、しっかりとした認識管理が重要となる(AJT 2003KI 2002)。

診断に関しては、OGTT負荷試験などで2時間血糖が200mg/dL以上や空腹時血糖で126mg/dL以上で糖尿病かを確認する。OGTTの施行時期であるが、本邦のガイドラインでも移植後一年以内は3−6ヶ月で施行し、移植後1年以降は年1回としている(空腹時血糖測定は適宜施行する。)

NODATのリスクをあげる因子
・免疫抑制剤:ステロイド、CNI、シロリムス(BMJで死亡率上昇の報告あり)など
・それ以外の要因:40歳以上の男性、HLAミスマッチ、急性拒絶の既往、献腎移植、多発性嚢胞腎、糖尿病家族歴など

なので、移植患者の管理で血糖のコントロールに注意を配ることは大事である。
また、血糖異常が見られた時に
ステロイドをなるべく早期に調整を行うことは重要である。ただ、拒絶もあるため完全にOFFにするのは推奨はされない。
また、タクロリムスをシクロスポリンに変更することに関しても推奨はされない。どうしても副作用が強ければ検討という形にはなる。

治療に関しては治療を徐々に上げていくことが推奨される。つまり、まずは非薬物的な治療を行い、ダメであれば経口血糖降下薬に移行し、難しければインスリン治療となる。

移植後の血糖管理は重要であり、移植後管理は内科医の腕の見せ所であると考える。
ドナー・レシピの想いの詰まった移植を長持ちさせるために我々も努力をしていくべきである。



2017/01/28

Withdrawal of immunosuppression after renal transplant failure(腎移植廃絶後の免疫抑制薬の中止)

腎移植を受けた人の腎臓の機能はどれだけ保持されるのであろうか?
ドナーの腎臓に影響する部分が多いと考えるが、平均15年前後である。ただ、現在20年を超える症例も多くなっている現状もある。

では、いよいよ腎移植患者が腎廃絶を迎えて腎代替療法の導入になった場合に困るのが免疫抑制剤はどうするのかということである。

結論は免疫抑制剤はやめるが、なぜやめるのか?
→感染、悪性腫瘍、ステロイド長期投与に伴う副作用が出現するためである。感染は特に死亡に直結する問題であり、軽視はできない。

感染に関しては、透析患者でも感染リスクは上がっているのに免疫抑制剤の継続でさらに上がることが報告されている(Clin Transplant 2001)。


ただ、免疫抑制剤をやめる時の合併症に関しても把握をしておく必要がある。
・拒絶が急激に起こり、移植腎摘出が必要になる可能性
・二次性副腎不全の併発
・残存腎機能の低下
などである。

では減量・中止の方法としてどうしたらいいのだろう?
決まったものはないが、移植施設では決まったプロトコールを取っているところも多い(Semin dial 2005)。
ただ、永久的なカテーテル挿入され透析になっている症例ではカテ感染のリスクも高いため抗生剤の中止を検討する。

一つ参考になるものとしてイギリスのプロトコールがある(Transplantation 2014)

・移植後1年以内に廃絶した場合:早期に移植腎の切除術を行い、免疫抑制剤の中止を行う。
・晩期に移植腎の廃絶や廃絶後6ヶ月以上免疫抑制剤を飲んでいる場合:免疫抑制剤を中止する。方法としては、早期にCNIとMMFを中止する。ステロイドに関しては1ヶ月に1mgずつ減量し副腎不全や拒絶が生じないかをみる。
・腎廃絶をしたが尿は出ている場合:MMFを中止し、CNIを1日1回に減量し、プレドニンを5mg/dayに減量する。そして、CNIとステロイドを3-6ヶ月かけて徐々に減量する。

移植患者で腎不全になった症例では免疫抑制剤の中止を忘れないように管理をしていく必要性がある。

2017/01/27

Immunosuppressive drug for transplant patients with infection(移植患者の感染時の免疫抑制剤について)

移植患者にとって免疫抑制剤治療は重要な治療薬であり、色々な場面に遭遇する機会が多い移植患者に対してどのように対応するのがベストなのかを考えるのはとっても重要である。

今回、感染症について触れてみたいと思う。
つまり腎移植で免疫抑制剤を飲んでいる人が感染症にかかった場合である。

これに関しては色々な意見があると考えるが、感染症の重要度は免疫抑制剤の量を考える上で重要である。

腎移植患者での免疫抑制剤に関して詳しくは今回は述べないが、タクロリムス(CNI: calcineurin inhibitor)、セルセプト(MMF: Mycophenolatemofetil)、ステロイド(purednisone)の3種類である。

・生命に危険の及ぶような感染や敗血症の状態がある場合:少量のステロイドを残して全ての薬を中止する(中断に伴う副腎不全のリスク)。
再開はCNIを中止後1週間以内で再開するがMMFは中止しておく。

・中等度の感染の場合(入院や抗生剤の点滴が必要だが、敗血症でない場合):大抵はMMFであるが、1剤中止する。中止期間としては4-6週間で、再開時は半分量から開始する。
何回も感染を繰り返すような場合は、MMFは中止する。

・軽度の感染の場合(気管支炎、軽度の肺炎、蜂窩織炎など):免疫抑制剤の量は変更しない。

感染症はやはりcommonな合併症であり、また生命を脅かす合併症である。
なので、我々は感染症に対する適切な対応の把握は重要である。


2017/01/26

AF with dialysis patient (透析患者の心房細動)〜anticoagulation therapy(抗凝固薬)〜

今回腎臓内科医にとって常々考えなくてはならない、慢性腎不全患者や透析患者が心房細動を発症したり発見したときに抗凝固薬はどうしよう?と常々考えるであろう。

心房細動患者の疫学については、高齢者であるほど発症率が高くなる(全年齢1%→80歳以上では8%)(JACC 2006)
心房細動と慢性腎不全の関連は血液透析患者の8-34%に心房細動が発症し、腹膜透析患者の7%に発症すると言われ、比較的頻度が高い(JASN 2011) (Europace 2010)
また、別な報告では末期腎不全に67%の割合で心房細動が起こっているという報告もあり、やはり腎不全と心房細動の発症に関しては関連がありそうである(Circulation 2013)。

なぜ、腎不全になると心房細動が多くなるのかははっきりとした原因はわかってはいない。
今回は抗凝固薬について触れたいと思う。

まず、腎不全や心房細動があって併発する危険性の高いものとしては下記のものが挙げられる。
・脳卒中:
脳卒中に関しては慢性腎不全で頻度が上昇する合併症である。腎機能が低下に伴い発症リスクも上昇する(NDT 2007)
心房細動自身の脳卒中リスクを上昇はさせるが、両者が併存している場合に慢性腎不全は単独のリスク因子であり、またCKDがあることが脳卒中の予測因子としては重要である。
・死亡リスク:
死亡リスクは腎機能の低下とともに上昇することがわかっている(NEJM 2004)。
腎機能障害に心房細動が併発し死亡率が上昇するかの検討は困難であるが、報告では死亡率上昇が示唆されている(AJC 2003)。
・出血リスク:CKD(特に血液透析患者)では正常な人に比べて出血リスクが上昇することがわかっている。また、ワーファリン治療をしているCKD患者では出血リスクがさらに増加する。特に消化管出血のリスクが高くなる(CJASN 2008)。

eGFR:30-59の場合:
CHADS2スコアが1以上であれば抗凝固治療を推奨している(Grade 1B)。
CHADS2スコアが0であれば、何も薬物治療をしないよりは抗凝固治療かアスピリン投与はしたほうがいい(Grade 2B)。
抗凝固薬の選択はNOACがワーファリンより推奨される(Grade 1B)。

eGFR:15-29の場合:
CHADS2スコアが1以上であれば何もしないよりは抗凝固治療を推奨(Grade 2B)
稀だがCHADS2スコアが0であれば抗凝固薬を飲ませるかは意見が分かれるところ。
抗凝固薬の選択はワーファリンがNOACより推奨される(Grade 2C)

eGFR:15未満で非透析患者:
eGFR15-29の場合と同様に考える。

透析患者:
基本的には抗凝固療法は推奨されない。
ただ、心房内血栓や弁疾患や以前に脳梗塞を起こしたりした場合にはワーファリンお投与が推奨される(Grade 2C)。

ワーファリンに関して
投与後90日はしっかりとモニタリングを行い、INRの目標を2-3の範囲に持っていくようにする。

これは腎臓内科医が多く質問される内容であると思う。
今回のことを踏まえてしっかりと患者の管理を考えていけるように自分も努力しよう。





2017/01/25

Diagnostic kidney imaging about nuclear medicine(腎臓の画像検査、核医学)

今回は腎臓の画像診断で、その中で核医学についての話をしたいと思う。
今回このトピックを取り上げた理由としては、純粋に自分の知識がなくしっかりと理解したかったためである。

そもそも、核医学検査とは微量の放射線を出すRI(放射性同位元素:Radioisotope)を体内に投与し、身体の状態を画像や数値で捉えるインビボ検査と、採取した血液や尿などの試料を試験管内で試薬と反応させ、ホルモンなどの微量物質を測定するインビトロ検査がある。臓器へのRI分布を3次元的に捉え、断層画像として表現するインビボ検査の断層法には、SPECT(Single Photon Emission Tomography)とPET(Positoron Emission Tomography)があります。
SPECT検査では1方向の放射線を放出するRIを用いるのに対し、PET検査は、2方向の放射線を同時に正反対の方向に放出するRIを用いる。
PET検査では検査薬はサイクロトロンという装置で作ったポジトロン核種が必要となるため、SPECT検査(これの検査薬は薬品を作っている会社から供給される)に比べて検査可能な施設は限られている。
解像度はPET検査の方が優れている。

腎臓にとっては核医学検査は腎臓の形態と機能を診断する情報ツールとして有用である(Radiology 2004)。

以前はSPECTのみであったが、現在はPET検査も普及し、またPET−CTなども有効なツールになってきている。

今回は特に核種からのアプローチをする。
1:99mTc-DTPA(99m-labeled diethylenetriaminepentaacetic acid ):GFRを推測するのに一般的に用いられる核種である。GFR推測の理想の物質としては、糸球体からのみ排出され、尿細管などで再吸収されないものである。99mTcはタンパク結合によって変動はする欠点はあるが、そのほかはイヌリンのような動態を満たしているため使用されている。

2:131-labeled ortho-iodohippurate (131I-ortho-iodohippurate):GFR(約20%)、尿細管分泌(約80%)の動態をとる。そのため、PAH(p-aminohippuric)の代替として用いられRPF(renal plasma flow)の測定に用いられる。

3:99mTc-MAG3(99m-labeled mercaptoacetyltriglycine):131Iと似たような動態ではあるが、放射線被曝が少なかったり画像の質が優れている利点がある。主には腎機能を見るのに用いられるものである。しかし、欠点として肝胆道系の排泄が3%程度あり(131Iでは0%)、腎不全では肝胆道系の排泄が多くなる。

4:99mTc-DMSA(99m–labeled dimercaptosuccinic acid):腎の皮質に高濃度に分布し尿にゆっくりと排出される。投与後1時間で約50%が腎の皮質に分布するため、腎実質の同定に有用である。つまり形態の評価に重要である。

5:FDG(Fluorine 18 2-fluoro-2-deoxy- -glucose):PET検査でもっとも用いられるものである。FDGは尿から排出される。基本的にはブドウ糖と同じ動きをするため、悪性腫瘍でもそうであるが細胞に取り込まれる。

各論に関しては、また次回以降に触れようと思う。
今回は総論だけ書かせていただいたが、少し知識の整理になった。

2017/01/24

IgA腎症の治療って(Treatment of IgA nephritis) パート3

今回紹介された患者さんで下記の患者さんがいた
「IgA腎症で扁桃摘出+ステロイドパルス療法、その後ステロイド後療法も終了した寛解維持をされている患者さんです。よろしくお願いします。」
内服薬を見てみるとコメリアンという抗血小板薬を飲んでいた。
恥ずかしながら、自分がIgA腎症での抗血小板薬の使用の経験が乏しく、どのくらい有効で継続していいかわからなかった。
なので、今回抗血小板薬のIgA腎症に対する有効性について少し触れてみたいのとIgA腎症の最新の論文を示したい。

抗血小板薬(ジピリダモール、塩酸ジラゼブ、アスピリンなど)のIgA腎症に対する効果はわが国で多施設のRCTが組まれて尿蛋白減少効果が示されているが、英文報告がなく国際的な認知には至ってはいない。
システマティックレビューでジピリダモールの腎機能障害抑制効果が報告され(Clinical and Experimental Nephrology 2006)、別の研究では有効性は認められなかった(Intern med 2011)。
塩酸ジラゼブに関しては、介入後3−4ヶ月時に尿蛋白減少効果を認めたが、6ヶ月時には統計学的な有意差は認められなく、腎機能障害の改善にも寄与していなかった。

KDIGOのガイドラインでは、抗血小板は使わなくてもいいとしている(Grade 2C)。
日本の報告では治療選択肢に考慮してもいいとしている(GradeC1)

抗血小板薬の使用に関しては、日本と国際的なガイドラインで意見が分かれている部分であるというのが、今回わかった。
これを解決するためには、RCTなどをすればわかるのかもしれないが、抗血小板薬単剤での治療ではなく評価は難しいのかもしれない。

今回、自分は抗血小板薬を一旦中止してみてタンパク尿の推移をみることとした。
今後のタンパク尿の推移を見ていきたいと思う。


また、最新の話題としてIgA腎症の重症度や進行に関してコペプチンがマーカーとして有用であるという報告がNDTからされた。コペプチン(Copeptin)はバゾプレッシンの前駆物質から生成されるペプチドであり、糖尿病の予測因子になったりも以前に報告されている因子である。
今回の研究ではIgA腎症59人の症例で検討されている。コペプチン濃度が高い症例の方がCre上昇や末期腎不全や免疫抑制剤開始などとの関連が強く、IgA腎症の予後予測因子の一つに有用ではないかという報告であった。

IgA腎症はアジア領域に多く、日本から発信の多い疾患である。
我々も症例から色々と学び、治療や診断など発展させられるようにして行きたいと感じた。


2017/01/23

Anticoagulant drug for AVF or AVG(シャントやグラフトの抗凝固薬使用)

前回はシャントやグラフトにおける血栓塞栓などについて話をした。
今回は、血栓などがおきた人でPTAや外科的治療を行い、起こさないために何かできる治療はないか?について記載する。

まず、血栓の90%以上が狭窄病変を有しており、NKF-K/DOQIのガイドラインでは、50%以上の狭窄病変や臨床的、身体所見的に異常のある場合(静脈圧の上昇や血流量の低下など)があれば、PTAの治療適応になる。ただ、狭窄の治療を上記の基準に満たないときに先行的に行うことについては意見が分かれており否定的な意見もある。
では、薬物的な予防治療はどうかというのが今回の話題である。

抗血小板薬(ジピリダモールやアスピリンやプラビックスなど)
−色々な研究が行われている。
■最も大規模なものは649人のAVGの人にジピリダモール(200mg ×2/day)+アスピリン(25mg ×2/day)とプラセボ群に分けてみたものである(NEJM 2009)。
結果は併用療法は開存率は明らかによかったが、有害事象(出血など)やAVG不全や死亡率は両者に差は認められなかった。2剤併用は出血リスクが多くなるとも考えられていたが、おそらくは抽出患者が出血リスクがすごく高い症例ではなかった。
■また、アスピリンの単独の使用を見たものでは、1年間のアスピリン使用は非使用者に比べてAVGの開存率がよく(30% vs 23%)、出血リスク、死亡率、入院期間、血管のイベントに差はなかったと報告している。これらの症例も出血リスクの高い症例は除いている(JASN 2011)。
■200人の患者に対してアスピリン+プラビックス群とプラセボ群で比較した報告もある。この報告は出血リスクがプラセボ群より高く中止となっている。肝心の血栓抑制に関しても明らかな有意差を持って改善させていることも認めなかった(JASN 2003)。

現時点では
・出血リスクが低く、血栓の詰まるリスクが高いAVGの症例ではジピリダモールとアスピリンの併用は一つの選択肢となる。

抗凝固薬(ワーファリン)
一般的にはワーファリンの使用は血栓の予防やAVG不全の予防に結びつかず、出血のリスクだけあげると考えられている。
上記を示した研究で、ワーファリンを飲ませPT-INRを1.5-1.9に設定した群とプラセボを比較すると、血栓の発生に差はなく、ワーファリン内服群では出血のイベントが多くなった(JASN 2002)。

なので、ワーファリンは基本的にはAVGの血栓予防には用いられない。ただ、特殊な過凝固の症例には用いる場合はある。

FISH OIL
これに関しては、AVGの血栓症を予防するかもしれないと報告されており、4g/dayの使用は推奨されている。(JAMA 2012)

その後の報告でFISH OILもRCTで効果がないという報告が出ている(JAMA 2017)

AVFにはボタンホール穿刺(同じ穿刺部位に穿刺を行うこと)がいいと言われているが、これのデメリットは感染リスクが上昇することである。

特に今回のことを調べるまでは、漫然とした使い方をしていたと感じた。
とても、今回も勉強になることがたくさんで、なるべく患者さんに生かしていけるように努力したい。




2017/01/21

Treatment of stenosis and thrombosis in AV graft(AVGの閉塞の治療を考える)

 今回はAVGに関しての話題に触れたいと思う。

 主にはAVFが80%の割合を占め、AVGは10%未満である。

 AVGを選択する時に、静脈が細い患者さんでは自分の血管を用いたシャントの作製が困難になる。その場合、腕の深い位置を走行している太い静脈と動脈を人工血管でバイパスする方法があり、これがAVGである。

 人工血管は今は3種類あり、ePTFE人工血管、ポリウレタン製人工血管、PEP人工血管がある。ePTFE人工血管は作成後、2週間以上経過し周囲の組織と人工血管が十分癒着してから穿刺する必要がある。ポリウレタン製人工血管、PEP人工血管は3層構造になっていて、自然に針孔を止血できる機能を有しているため、周囲組織との癒着を待たず、手術の翌日から穿刺することが可能という特徴がある。

 AVGはAVFに比べて人工のものであり、血栓閉塞を来たしやすい。

 そのため、AVGの閉塞はよく認められる。

 血栓閉塞は術後2週間以内の早期閉塞と晩期閉塞に分けられる。

 早期閉塞は手術の問題が多い。吻合する動静脈の誤りなどがある。

 晩期閉塞に関しては血管の狭窄(主には流出路狭窄が多い)、感染や偽性動脈瘤などが原因となることがある。

 僕らが直面するものとしては、グラフトと血管の吻合部の狭窄から起因するものが多いと考える。ただ、25%以上が突然閉塞(あまり予兆なく)するので、注意が必要である。

 治療に関しては、 

・グラフトと血管の吻合部の狭窄であれば、まずはPTAの治療を優先させる(AJKD 2006)。PTAをしても改善ない病変であれば外科的な治療が選択となる。

・グラフトの血栓閉塞に関しては明確な答えはない。2006年のK/DOQIのガイドラインでも状況見てPTAか手術かは判断しなさいということになっている。

 一つの意見としては、PTAでの血栓の開存率も悪くはないため、まずはPTAを行う。ダメなら外科手術というのが一つの考えとしてある。その中でも、慢性的に血栓がある症例(1ヶ月前からあるなど)は外科の方がいいと考えられている。

 個人的にはグラフト閉塞の際に、PTAはそんなに意味ないのかなと思っていたが、意味はあるとわかった。

実際にグラフトが詰まった際にはいつぐらいから詰まったのか?詰まる兆候があったのかを確認することは、治療の判断で重要であると感じた。






Treatment of stenosis and thrombosis in AV fistulae(AVFの血栓や石灰化での治療を考える)

今日はタイトルの題名について触れようと思う。
もし、できれば次にグラフトについて記載できたら書こうと思う。

今回、このタイトルにしたのはやはり血液透析患者のシャントが急に音が聞こえなくなってしまうことは一定頻度で起こりうる。
透析患者にとってシャントは生命を維持する透析を行う上で重要なものであるし、やっぱりこれが詰まってしまったら一大事である!
シャントが詰まってしまった時にしばしばどんな治療の選択肢があるのか?と常に迷ってしまう。少しでもこれを解決するために勉強してみたいなと思った。

まずシャントが詰まってしまった時に考えるのは血栓に伴うものなのか?それとも元々シャントの石灰化があり狭窄していて詰まってしまったのかを考える。
シャントの石灰化はシャントの生存率の悪化と直接関連することはわかっている(Nephron 2015)

シャントの血栓症に関してであるが、基本的に石灰化があっても最終的に閉塞をきたす因子としては血栓によるものが多い。
血栓症に関してはその部位によって治療の手段は変わってくる。
その時に下記の分類が役に立つのかもしれない。

Type1狭窄:A-Vshuntや近傍の閉塞(約80%の狭窄)
→これに関しては一つの選択肢は狭窄にワイヤーが通過するのであれば、PTA(経皮的血管形成術)を行うのは選択肢ではあるが、この部分の狭窄はバルーン拡張をする際にかなりの圧力と長時間バルーンをふくらませる必要が出てくる。また、成功率そこまで高くないため外科的な処置を要することが多い。なので、外科に初めから相談するのも一つの選択肢となる。

Tpe2狭窄:穿刺部の短い狭窄か穿刺部の間の狭窄
→まずはPTA治療が初期の選択肢になる。中にはバルーンをふくらませてもすぐに再狭窄を起こす繊維性狭窄はある。ステントを入れるのも選択肢にはなるが、穿刺部にステントを入れるのは現実的でなく、基本的にはPTAしても再度狭窄するものやできない場合は手術の適応となる。
多発性や長い狭窄の場合にはグラフトを用いてバイパスの治療を行うことが一つの選択肢となってくる。

Type3狭窄:腕頭静脈の狭窄
→治療に関しては慎重に注意を払いながらPTAを行う。特にPTAでバルーンをふくらませることで静脈の破裂には注意をする必要がある。破裂が起きた場合にはステント留置をしなくてはならなく、それに伴う閉塞を起こすリスクも高くなる。

今回この話題を書き、自分の頭の中ではだいぶ整理された。
色々と学ぶことがあって楽しい。


2017/01/18

妊娠している人の腎機能障害(AKI in pregnancy) パート4



今回は最後として、題名通りのAKIについての話題にしたいと思う。
J Nephrolの論文がわかりやすい。

現在先進国では妊娠関連のAKIは少なくなってはきているが、出生前のケアがしっかりしていなかったり、非合法的な中絶が起こっている場所ではAKIの頻度は多くなってきている。

妊娠のAKIは原因に関しては大きく2つのピークに分かれている。
一つは妊娠早期(妊娠20週以内)で妊娠悪阻や中絶手術の感染や細菌やウイルス感染による急性尿細管壊死(ATN)などが原因となる。
もう一つは妊娠後期(妊娠20週以降)でpreeclampsiaやTTP(血栓性血小板減少性紫斑病)やHUS(溶血性尿毒症症候群)やHELLP症候群(妊娠の肝機能上昇、血小板減少、溶血)やAFLP(妊娠の急性脂肪肝)、ATNや急性腎盂腎炎や稀だが尿路閉塞などが原因となる。

ちなみにpreeclampsiaは妊娠高血圧腎症のことであり、妊娠20週以降に初めて高血圧が発症し、かつ蛋白尿を伴うもので、分娩後12週までに正常に復する場合をさす。

上記の検索のための妊娠中の検査としては尿沈渣と尿の円柱などの分析、超音波検査を行う。また、タンパク尿の評価で蓄尿検査か尿中タンパク−クレアチニン比の計算などを行う。また、細菌の評価のために尿培養検査を行い、溶血や血小板減少の鑑別などで血液のスメア像の確認を行う。また、溶血の確認のためにT-BilやD-Bil上昇やハプトグロビンの低下やLDHやAST上昇を確認する。

経過や身体所見や検査結果などで鑑別を行うが、しばしば難しいのがpreeclampsiaにHELLP症候群やTTPやHUSやAFLPが合併しているか否かである。しかし、大抵は臨床像で診断をつけることが多く、腎生検はほとんどこの場面で診断に用いられることは少ない。

治療は原疾患に応じて行う。
Preeclampsiaを伴うAKIであれば出産が治療になる。出産により多くは腎機能は改善する。アルブミン尿は残存することもある。

TTPや HUSに伴うAKIは血漿交換を要することが多い。

AFLPに伴うAKIはDICの治療と胎児の娩出が治療となる。

これに加えて基本的にはAKIの治療は支持療法となるため、透析の必要があれば検討する必要がある。

今回4回に分けて妊娠と腎障害のお話をした。
私が苦手な分野だったのでとても勉強になったし、このようなことを知っておかねばと痛感した。これからも知識を少しずつ付けていけるよう頑張ろう!!




妊娠している人の腎機能障害(AKI in pregnancy) パート3

今回は糖尿病患者さんが妊娠したらということについて考えてみたい。
糖尿病の患者さんは316万人であり、女性は140万人の時代になっている(2014年の調査、今度は2017年に行われる。)
つまり、出会う確率も非常に高く、また腎疾患との関連も強いため認知する必要がある。

糖尿病患者での妊娠で腎臓に影響があるものとしては下記である。
アルブミン尿:非糖尿病患者においても60%以上がGFR増加し、アルブミン尿の排出は増加する。同様に糖尿病性腎症を有する人も妊娠を契機に増加するが、出産と同時に元に戻ることが多い。ある研究でも糖尿病性腎症で30-300mg/dayの患者が妊娠した際に尿アルブミンは708mg/dayに増加し、数名がネフローゼレベルのタンパク尿(3g/day以上)を呈したが、全員が出産後12週間で元の値に戻っている。

腎機能:腎機能に関しては、パート2で書いたように腎機能障害がもともとある人はリスクが高くなる。また、糖尿病患者で微量アルブミン尿やタンパク尿が出ていない症例は腎機能悪化のリスクは低い。

糖尿病性腎症は血糖コントロールが問題なくても胎児成長障害、出生前胎児テスト異常、preeclampsiaのリスクが上昇する。妊娠合併症の発生で帝王切開のリスクは上昇する。

糖尿病性腎症の妊婦では血圧コントロールをしっかりと行う。その際に通常であれば推奨されるACE-IやARBの使用は禁忌とされている。理由としては薬剤に伴う催奇形性のためである。そのため、この点には注意する!目標の血圧はADA(アメリカ糖尿病糖尿病学会)の推奨では120-160/80-105である。
降圧薬に関しては、アルブミン尿を伴う症例には非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬(ヘルベッサーやワソランなど)がいいのではないかと言われている(KI 2004)。理由としては降圧作用に加えて、タンパク尿の低下作用も期待してである。しかし、タンパク尿低下に対してはそこまで効果的ではないという報告も多い。
妊婦に対して使用できる降圧薬に関しては、メチルドパ(アルドメット:α2刺激薬)、ヒドララジン(アプレゾリン)などであり、これに関しては知っておく必要はある。

また、preeclampsiaの予防にlow doseのアスピリン使用(81mg/day)はケースによっては推奨されている(Lancet)。なので、リスクが高い症例(慢性的な高血圧症例や妊娠前から血圧が高い症例)は妊娠後12週から出産まで使うのも一つの選択肢かもしれない。

今回は糖尿病腎症と妊娠についてまとめてみた。
ここの部分の管理は本当に難しいなと常々思っているが、我々が知識のアップデートを怠ってはいけない領域である。





2017/01/15

妊娠している人の腎機能障害(AKI in pregnancy) パート2

パート2としては慢性腎不全おける妊娠はどうなのかを考える。

ある研究では軽度の腎機能障害(SCr<1.3mg/dl or GFR 60-89mL/min/1.73m2)がある症例では、血圧が正常であったり、タンパク尿のない症例では腎機能障害や児への合併症はほとんどない。しかし、高血圧の合併例やタンパク尿がある症例では、preeclampsiaの発症は妊娠患者の1/3に生じるとされる。また、低出生体重児や胎児死亡がわずかながら正常妊婦に比べ上昇すると言われる(J Woman Health 2003)。

中等度腎機能障害(SCr1.3-1.9mg/dl or GFR 30-59mL/min/1.73m2)での妊娠は軽度腎機能障害の妊婦に比べて明らかに合併症の割合は高くなる(NEJM 1996)。早期出産の割合は通常の10%程度から50-55%と高くなる。また、胎児死亡も6%と高くなり、34-37%の児が小さくなる。高血圧やタンパク尿の合併割合も高くなる。約25-38%の妊婦が血清Crが上昇する。出産6ヶ月後も腎機能低下が持続する例も1/3に認められ、10%が末期腎不全に至る。
GFR 40-59mL/min/1.73m2の妊婦は腎疾患の進展の危険性なく妊娠ができうるが、GFR 40mL/min/1.73m2未満の妊婦で1g/day以上のタンパク尿が出ている妊婦では合併症の割合が非常に高くなる(AJKD 2007)。

重度腎機能障害(SCr>1.9mg/dl or GFR 15-29mL/min/1.73m2)の妊婦ではさらに合併症の割合が高くなっている。早期出産の割合(73%)や低出生体重時の割合(57%)が高くなる。
ある報告では64%のpreeclampsiaの発生の報告や腎不全への移行が非常に高いことが報告されている(NEJM 1996)。

末期腎不全における妊娠:透析患者の女性の妊娠することは一般的に困難であると言われている。ただ、以前は妊娠の割合が0.9%程度と言われていたが、最近の技術の進歩で1-7%になってきたと言われている。受精したとしても妊娠前期で流産する割合が高いと言われている(Semin dial 2003)。妊娠出産の割合も1994年以前は27%であったが、最近の報告では65%程度にまで高くなってきている。ただ、依然胎児死亡は高い(14.1%)という問題も残っている。出生した児の平均も32週で2000g程度という報告もある(AJKD 1994)。

腎不全患者の妊娠を考えるときに常に児のことはどうか?患者本人の今後の腎臓の予後はどうなのか?ということを常に話し合わなければならないし、その部分が一番難しい部分であると感じる。
そのために、児を出産するために腎移植を踏み切る症例もあるが、移植後は1年間は妊娠は控えてもらうことが多く、患者の年齢との相談になるのであろう。

次回はパート3で合併症についてお話しする。




2017/01/14

妊娠している人の腎機能障害(AKI in pregnancy) パート1

今回は妊娠している人の腎機能障害に関して触れて見たいと思う。
妊娠している人の腎機能障害は総合病院で勤めていると絶対にコンサルトされる内容であるし、しっかりと知識の整理ができていることが重要である。

・妊娠時のGFRやタンパク尿などに関して
妊娠中は一般的にはGFRが増加し、血清Crの減少を呈する。平均して0.4-0.8mg/dlの低下を認めると言われる(Adv chronic kid 2007)。
そのため、Crが1mg/dlは非妊娠者では正常値であるが、妊娠者では腎機能障害があると考えるのが重要である!

GFRの推算でMDRD式やCockroft-Gaultの式などがあるが、これは妊娠者の腎機能を評価するのは不適切の可能性が高い。MDRD式では、GFRの過小評価になり、Cockroft-GaultではGFRを過大評価すると言われている(Am J Perit 2007)。そのため、妊娠中のGFRのGold standardとしては24時間蓄尿のクレアチニンクリアランスになる。

タンパク尿に関しては尿のタンパク/クレアチニンが評価に用いられる。蓄尿のタンパクの方が正確であるが、ある研究(AJKD 2003)では正確性に差はなく、簡便であるため、これが用いられる。
妊娠患者でのタンパク尿の測定の意義は2つあり、1つは妊娠中のタンパク尿の推移の把握をし、腎炎などが妊娠時にないかの把握である。2つめは子癇前症(preeclampsia)の診断のためである。preeclampsiaは定義は妊娠20週以降に、新規の高血圧(140/90を超える)、タンパク尿(24時間で300mg以上)を認めるものである。
preeclampsiaの診断に尿のタンパク/クレアチニンを用いることは24時間蓄尿に比べてどうなのかという議論はある。
これに関しては、あるメタアナリシスで24時間蓄尿に比べタンパク/クレアチニンを用いた場合のpreeclampsiaの診断感度は90%で特異度は78%となっている(Clin chem 2005)。
タンパク尿が250-400mg/dayの時は診断しづらいという報告もある。

今回は、妊娠における腎機能の話とタンパク尿の話をパート1として話した。
次回以降に腎機能障害についてお話ししていこうと思う。


2017/01/11

CHOIR trial , CREATE trial , TREAT trial(腎不全の貧血における大切な論文)

前々回の投稿で上記に関して触れると言うお話をしていたので、今回はこの話題に触れたいと考える。
日本透析学会から2015年に慢性腎不全における腎性貧血治療のガイドラインが出ている。
これは細かいところやエビデンスなども書かれており参考になるので、一度読んでいただけたらなと思う。


その中で、今回重要な3つのtrialについて触れたいと思う。
目的:慢性腎不全(CKD)患者1432例において、遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(エポエチンα)によるヘモグロビン改善により心血管疾患および心血管死のリスクを低下できるかを検討した研究である。
一次エンドポイント:死亡+心筋梗塞(MI)+うっ血性心不全(CHF)による入院(腎代償療法を除く)+脳卒中としている。
割付:この研究はヘモグロビン高値群(715例):目標Hb値を13.5g/dLとしてエポエチンαを投与,低値群(717例):目標Hb値を11.3g/dLとしてエポエチンαを投与した。
結論:目標ヘモグロビン値を13.5g/dLとした場合、11.3g/dLの場合と比べ心血管リスクが上昇し,QOLのさらなる改善は認められなかった。
追加解析結果:到達したHb 値とエポエチンα 投与量を指標とし、高Hb 値群に割り付けられた患者の中でも到達したHb 値が高い患者のほうがむしろ予後がよく、エポエチンα高用量の使用が予後悪化との関連性を説明する因子となり、目標のHb 値が高いことと予後悪化の関連性は確認されなかった。

なので、高用量のEPOの使用をなるべく控えるために、鉄剤や今後出るかもしれないHIF阻害薬は有効なのかなと感じた。

目的:CKD stage3~4の患者(603人)で、貧血の完全正常化により心血管転帰が改善するかを検討。
一次エンドポイント:突然死+心筋梗塞(MI)+急性心不全+脳卒中+一過性脳虚血発作+24時間以上の入院を要する、あるいは入院が長引く狭心症+末梢動脈疾患+24時間以上の入院を要する不整脈とした。
割付:貧血完全正常化群(301例):目標Hb値13.0~15.0g/dLとしてエポエチンβを2000IU/週で皮下注、貧血亜正常化群(302例):目標Hb値10.5~11.5g/dLのレベルまでエポエチンβを皮下注。
結論:CKD患者において、早期に貧血を完全正常化しても心血管イベントのリスクは低下認められなかった。


目的:慢性腎疾患(4038例の2型糖尿病患者)で貧血を有する2型糖尿病において、エリスロポエチン製剤darbepoetin alfa(ネスプ)の臨床アウトカムへの効果を検討。
一次エンドポイント:全死亡+心血管イベント(非致死性心筋梗塞,うっ血性心不全,脳卒中,心筋虚血による入院)、全死亡+末期腎疾患とした。
割付:darbepoetin alfa群(2012例)では、ヘモグロビン値13g/dL維持を目標。プラセボ群(2026例)では、ヘモグロビン値<9.0g/dLの場合にdarbepoetin alfaを投与。
結論:CKDで貧血を有する2型糖尿病患者において、darbepoetin alfaによる臨床アウトカム改善は認められず、脳卒中リスクが増大。

現在のマネジメントとしては、Hbの目標値は10-12g/dLとして管理推奨されている。
その際に、EPOの使いすぎは良くないので、鉄剤の適切な使用や今後出てくる貧血の改善薬の使用はEPOの量を抑えると言う点で重要である。
また、CKD患者では出血リスクも高いため、出血の有無を確認することは重要である。




Chronic kidney disease and bone fracture(CKDと骨折)

腎臓が悪い人は骨折をしやすいことは耳にしたことがあると思う。透析患者における大腿骨の近位部骨折は様々な報告がされエビデンスが蓄積されている(Osteoporos Int 2014)し、透析患者では骨容量が低下していることもわかっている(Clin nephro 2016)。

ある症例を見てみよう。
慢性腎不全(CKD stage4)で入院中の患者で退院間近であった。
夜にトイレに行こうと思った際にふらついてしまって、転倒してしまい臀部と大腿骨を売ってしまった。色々と精査をしてみると大腿骨頸部の骨折が認められた。

その際に慢性腎不全患者では骨に関してはどうなのか?ということが疑問になり今回書いてみる。

まず、CKDと骨粗しょう症の関連性はある(NDT 2009)。
原因として、一つはCKD-MBD(mineral bone disease)に伴いカルシウムやリンやPTH、VitD欠乏などの変動が生じるためであるが、はっきりとした原因に関してはわかってはいない(Clin Exp Nephrol 2016)。
骨折に関しては骨粗しょう症の他に慢性腎不全の増悪に伴う脆弱性の出現があり、それに伴う転倒リスクが増大するためと考えられている。


面白いなと思ったのが、日本の報告で尿毒素物質自体が骨質の劣化を起こし、骨粗しょう症を起こしているのではないかと言う報告である(Bone 2013)。
尿毒症性骨粗しょう症と言う名もあるようで、これは今後の研究が進んでいく分野であると感じた(KI Suppl 2011)。

やはり骨折は患者のQOLが落ちるので、我々がしっかりと機序を認知して、今回は書かなかったが予防をすることが重要であると感じた。



2017/01/09

HIF(hypoxia-inducible factor)について

最近HIFについてよく耳にすることも多いとおもう。
HIFは日本語では低酸素誘導因子と言われる。言葉の通りで、細胞組織に対する酸素供給が不足した際に誘導されるタンパク質である。

まず、HIFの分類について簡単に書く。
HIFは3種類のHIF-αサブユニット(HIF-1α、HIF-2α、HIF-3α)、HIF-1βサブユニットに別れている。そもそも、HIFはDNAとの結合に関わるタンパク質であり転写因子として機能するものである。

発見の歴史として、HIF-1は,肝がん細胞株Hep3Bにおいて「低酸素依存的にエリスロポエチン(EPO)を誘導する因子」として1992年にSemenza らによって発見された。そして1995年にHIF-1がHIF-1α HIF-1βのヘテロダイマーであることが報告され、同年に各遺伝子がクローニングされた。その後,相次いでHIF-2αHIF-3αが同定された。

HIFが注目されているのは、一つは腎性貧血の分野である。
HIFは細胞組織に酸素が十分にあるときは分解されるが、低酸素の状態の時には核内に移行して、エリスロポエチンの転写を促進する。
腎性貧血の原因としてエリスロポエチンの産生細胞の機能低下ではなく、HIF活性低下が原因であると言われている。
また、HIFに関してはプロリルヒドロキシゲナーゼによって制御されていると言われている。

なので、最近は腎性貧血の治療にここのHIFをターゲットにした治療が行われている。
例えば、AJKD2016の論文のRoxadustat(FG-4592)はプロリルヒドロキシゲナーゼの阻害薬で、これによりHIFの活性化をはかり腎性貧血を改善するものを見た研究になる。

この研究は第2相試験のものであり、詳細に関しては割愛はするがRoxadustatを使用することで、慢性腎不全や維持血液透析を行なっている人のHbの維持に寄与したと報告している。Limitationとしては人数がpart1で54人、Part2で90人と少なく、期間もPart1で6週間、Part2で19週間と短かった。

しかし、今後腎不全患者の貧血の薬としてEPO製剤、鉄剤に続き出てくるであろう。いろいろな方向で患者さんの治療を行うことは重要であると感じる。

次回は貧血の研究で重要な研究であるCHOIRとCREATEについて触れられたらと思う。


HIF-1αの構造


[2019年10月8日]2019年のノーベル生理医学賞が、上述のSemenza先生(写真左)と、Ratcliffe先生、Kaelin先生に贈られた!



(ノーベル財団ウェブサイトより)


 ノーベル財団ウェブサイトの解説がわかりやすいが、Semenza先生によるHIFとHIF遺伝子の発見後には「酸素があるとどのようにHIFが分解されるのか」が研究対象になった。HIFは酸素があるとユビキチン化されてプロテアソームで分解されるが、その仕組みがわからなかったのだ。

 すると同時期、von-Hippel Lindau病を研究していたKaelin先生が、VHL遺伝子変異のある癌細胞では、低酸素で活性化される遺伝子がONになっていることを発見した。VHLタンパクには、分解したいタンパクをユビキチンで標識する働きがある。そしてRatcliff先生が調べてみると、じっさいにVHLはHIF-1αと結合していた。

 残りは、「酸素があるとどうしてVHLはHIF-1αに結合するのか?」という問いだ。これをKaelin先生とRatcliff先生が一緒に調べると、酸素があるとHIF-1αタンパクの2ヶ所が水酸化されることがわかり(プロリル水酸化、下図も参照)、さらにRatcliff先生のグループがプロリル水酸化酵素、プロリルヒドロキシゲナーゼを同定した。


(ノーベル財団の解説PDFより)


 こうして見つかった「HIFのプロリルヒドロキシゲナーゼ(HIF-PH)」阻害薬が、上述のRoxadustatをはじめとするHIF-PH阻害薬というわけだ!


(ACKD 2019 26 253より)


 2018年のノーベル賞では、「腎臓内科でもそんなふうに研究成果が身近に感じられるといいな」と、うらやましく思った(こちらも参照)。今年は、身近に感じられて、うれしい。来年も、そうだといいな。





2017/01/08

心筋障害の分類に関して(Classification pf patients with myocardial injury)

特に腎疾患は関係なく、心筋障害の分類に関して触れてみよう。
これに関してはHeart 2017の論文が参考になる。

個人的には知らなかったのだが、この論文では心筋梗塞の原因を5+αで分けている。
Type1:冠動脈粥種や破裂に伴う心筋虚血
Type2:心筋への酸素需要と供給のバランス不良に伴う心筋梗塞
Type3:心筋梗塞に伴う突然死
type4a:PCIに起因する心筋梗塞
type4b:ステント塞栓に伴う心筋梗塞
type5:心臓外科手術による心筋梗塞
injury:様々な原因によるもの(急性、慢性を問わず。)

この論文で面白いなと思ったことは、type2の心筋梗塞はtype1と同じように年齢が上昇するにつれて増加している。
では、慢性腎臓病などの腎疾患がある人は、type2の心筋虚血が通常の年齢よりも早まらないのかな?と思ってしまう。

また、この論文の中でアルゴリズムがあり、トロポニンの値が一つの指標になっている。トロポニンは腎不全患者では高くなることが知られている。ただ、高くなりやすいが、正常値よりも高い症例では低い症例に比べて左室収縮能の低下などあることも報告されている。

心臓にフォーカスを絞ってみると、本当に腎臓との関係性がよく見えてくる。


透析患者や慢性腎不全患者さんの心臓死(Cardiac death in dialysis or CKD patients)

透析患者さんの心臓死に関して、研究会での話を聞き色々と勉強になったので書き留めたいと思う。
臨床の現場でも慢性腎不全や透析患者さんの死因で心臓死の患者は多い印象が強い。
心臓死といっても心不全や心筋梗塞や突然死などがある。

突然死に関してはKのコントロールなどが不良であったり、心筋の障害に伴い心室細動などを起こし突然死するのかな?と思っていた。
JACCの2015報告で、突然死の原因として徐脈性不整脈に伴う突然死が原因であったと報告している(50人をリクルートして、5人の人が亡くなった報告である)。

徐脈性不整脈が原因であれば、今後、慢性腎不全患者や透析患者さんの心疾患に対してのβブロッカー投与はどうなんだろ?と思ってしまう。ここは調べるべきポイントなのかなとも思う。

NDT2015の研究で、台湾の末期腎不全の患者28471人(9700人のPD患者、18771人のHD患者)と113769人の腎疾患を有していない人で、恒久的心臓ペースメーカーの挿入の割合などを見ている。
この研究では、コントロールに比べHD患者でHRで3.26、PD患者でHRで2.36の恒久的ペースメーカー挿入であった。

この研究では、透析患者さんのペースメーカーの挿入の割合が高いことがわかる。
また、反対に徐脈を来したために入れたのか?とも解釈ができる。

では、透析患者全員にペースメーカーを入れればどうなのか?
個人的には、房室伝導系の破綻などが起こっているので、全員に入れた時のベネフィットがそこまで高いのかな?と思ってしまう。

腎臓が悪い人にとって心臓の問題は重要なところである。しっかりと考えながら診療にあたっていきたい。


2017/01/06

血液透析患者におけるPTH管理の重要性(PTHによる血液凝固)

2016年度のアメリカ腎臓学会で上記の報告が出された。
しかも、日本人の報告である。嬉しいし、自分も頑張らなくてはなと思う。

36人の透析患者さんでダイアライザーの凝固を見たものである。(ダイアライザーの凝固は透析の終了後にダイアライザーの空洞に10個以上の凝血があったものとしている)
この研究では凝血との関連があるものとして、PTHやALPなどがあった。
ALPを低い群と高い群に階層化して、低い群での凝血との関連を見るとintact PTHが100をカットオフとして100を超えるものは2倍の凝血があったと報告している。

日本のガイドラインではPTHの目標は60-180pg/mLであるが、その中で回路凝血が多い人はPTHの管理目標を100未満にするのは一つの方法なのかもしれない。

だけど、本当にこのような臨床研究報告を見ていると刺激を受ける。


2017/01/05

多発性骨髄腫を透析で治療できないか?本題 (Dialysis for multiple myeloma)

前回、多発性骨髄腫に対する透析で基礎の部分をお話した。
ちなみに、2016/12月号のCJASNのMoving point in nephrologyはparaprotein特集でありワクワクしてしまうので見ていただきたい。

前回もお話ししたように多発性骨髄腫の腎機能障害の原因となりうる軽鎖は(22.5-45kD)である。

まず、初めに治療的血漿交換は軽鎖を取り除けるのではないか?と考えられた。
最近の大きなRCT(104人のcast nephropathyの症例)で6ヶ月の時点での死亡や透析や腎機能改善に利点をもたらさなかった。
しかし、最近のもので大抵はボルテゾミブを投与する前に行う血漿交換をボルテゾミブと血漿交換を併用して行なったら14人中12人の腎機能が改善したと報告がある(NEJM 2011)。

ただ、現時点でのエビデンスとしては血漿交換は有用ではないというところである。

High-CutOff hemodialysis(HCO血液透析)は大きな膜孔(10nm)のヘモフィルターを用いて数週間の間、軽鎖を除くために使用される。High-Flux膜よりも2倍以上の大きさであり、大きさとしては約60000Dまで除くとされている。
なので、軽鎖はのぞかれると考えられている。試験管内の実験でも3週間のHCO-HDで90%の軽鎖が除去されたと報告されている(JASN2007)。
しかし、様々な研究で化学療法を上回るようなHCO-HDの結果は不明確であった。
また、化学療法が一定頻度で腎機能を改善させるため腎機能の改善に純粋にHCO-HDが有用であるというのは難しかった。

そこで、出たのがヨーロッパからのトライアルでEuLite trial(European Trial of Free Light chain removal by Extended Dialysis)とMYRE trial(Multiple myeloma and renal failure due to cast nephropathy)である。
MYRE trialはongoingで、透析が必要な多発性骨髄腫の急性腎不全の患者にボルテゾミブを基本とした化学療法を行い、透析を通常透析にするかHCO-HDにするかで比較したものである。これの結果は待ちたい。
EuLite trialは結果はまだpublishされてはいないが、英国でのmeetingで報告された。
90人のランダム化されたHCO-HDかHigh flux透析の比較で、HCO-HDは腎機能の改善に寄与しておらず、感染の合併症が増えたと報告している。

果たして、ここの部分はどうなるのか?今後の動向が楽しみです。
日本ではHCO-HDはやっているところもあるかもであるができないところが多いので、この結果が有用だと出ればこのような透析も選択肢になるのかもしれない。。



2017/01/03

多発性骨髄腫を透析で治療できないか?導入編 (Dialysis for multiple myeloma)

今回上記の話にしたのは多発性骨髄腫の患者さんで一定頻度で腎機能障害を起こす患者がいる(この話は希望があればまた、書きます)。
その際に腎機能障害の改善が乏しい際に、緊急的な血液透析の方法を選択することが多い。次の投稿で述べるが、血液透析を行う際にヨーロッパの研究でHigh cut off dialysisの研究(EuLite Trial)の研究が今年学会で報告されていた。以前にこのブログでも触れている。
それに合わせて、最初は透析の基礎的なことをお話ししようと思う。

透析に関しては、ダイアライザーの部分が重要な役割を果たしている。
ダイアライザーで血液の流れと逆向きに透析液を流すことで、拡散と濾過の原理を用いて尿毒症物質の除去や電解質の調整や不足物質の補充、水分の除去を行い廃絶した腎臓の代わりとして働いている。

ダイアライザーを通過する際に、どれだけ物質が除去されたかを示すのがクリアランスであり、血液流量(QB)、透析液流量(QD)、総括物質移動面積係数(KoA)で規定される
(ちなみにQB,QDで遅い方がクリアランスを規定する:
例として通常透析ではQB:200ml/min,QD:500ml/minの際はQBが規定するし、
CRRTではQB:150ml/min,QD;500ml/hr=8.8ml/minでは、QDが規定する)。

ダイアライザーに関してはβ2MGのクリアランスでⅠ〜Ⅴ型に分類されている。

KoAはKo(透析膜の通過しやすさ)×A(面積)で決定される。
ここで、面積が大きくなればダイアライザー内の通過時間が長くなり分子量の大きな物質が除去されやすくなる。
また、膜の種類によって膜孔の大きさが異なり大きいと分子量の大きなものが抜けていく。分子量としてはダルトン:分子量の単位で示されている。

・小分子量(500ダルトン以下)のものとして、尿素窒素(60ダルトン)、クレアチニン(130ダルトン)、電解質(数十〜数百ダルトン、K(39ダルトン)、尿酸(168ダルトン)、水(18ダルトン)、アルミニウム、アンモニアなど

・中分子量(500~5000ダルトン)のものとしてビリルビン(535ダルトン)、ビタミンB12(1355ダルトン)、ポリペプチド、ポリオールなど

・大分子量(5000ダルトン以上)のものとしてβ2-MG(11800
ダルトン)、α1ミクログロブリン(33000ダルトン)、インスリン、プロラクチン、レニン、ヘモグロビン(68000ダルトン)、アルブミン(69000ダルトン)など

免疫グロブリンはIgG(15万ダルトン)、IgG(16万ダルトン)、IgM(90万ダルトン)になっている。
軽鎖はIgG(γ鎖:53000ダルトン)、IgM(μ鎖:65000ダルトン)、IgA(α鎖:55000ダルトン)
IgE(ε鎖:73000ダルトン)である。

今回は透析の基礎的な部分をお話しさせていただいた。これを基礎として次回EuLite trialなど骨髄腫と透析に関して触れる予定である。




2017/01/02

肝硬変患者の輸液に関して(Transfusion strategies in cirrhosis)

あけましておめでとうございます。
今年も一年このブログを通して、何か伝えられればなと思っています。

さて、新年第一弾は上記タイトルとした。
僕たち腎臓内科にとっても相談されてどうしようかなと迷うものの一つに肝硬変患者における輸血をどうするかがある。
そこで、今回は2016年の論文を参考にしながら少し記載をして見たいと思う。

まず、ここに記載してあるものとして肝硬変の凝固能に関してである。
僕の認識では、肝硬変患者では凝固しにくく出血しやすいという印象が強かった。しかし、これも最近は認識が変わっているらしく、肝硬変患者は凝固しにくいことはないということである。
肝硬変患者では静脈血栓リスクは上昇する(Am J Gast 2009)。
実験では肝硬変患者で血小板が5万以下の場合のみトロンビンの産生の障害が生じる(Hepatology 2006)。
なのでPT時間だけで、出血傾向は言えない。メタ解析でも予防的なFFP投与の使用が赤血球輸血の使用を減らしたことはないので、PT時間だけを参考にしてPT時間を改善するのは良くないのであろう(Transfusion 2012)。

肝硬変患者に一定頻度で輸血を行うことがあるが、これは消化管出血の患者でHb<7g/dlで輸血をする群の方がアウトカムはよく、再出血が少なかったとされている(NEJM 2013)。
最近のヨーロッパのガイドラインではHbの目標が7-8g/dlとなっている。

予防的な投与はどうかではあるが、小さな研究では予防的なFFPの使用は出血のリスクを低下させたなどの報告はあるが、この群では出血リスクが低い人を対象としており、判断は難しい(Hepatorogy 2016)。

肝硬変患者さんにおける輸液や輸血の分野ではまだまだこれから色々と解明されてくるであろう。

肝硬変患者さんは多く、自分もしっかりとした対応などできるようになりたい。



2017/01/01

透析患者のアクセスを再考する(access of hemodialysis patients)。

年末の最後の投稿は透析患者のアクセスについて考えるです。
これは2016年のJASNの論文があり、アクセスの違いでの死亡率などを見ている。アクセスに関しては臨床向けでAVFと透析カテーテルの比較である。
ちなみにこの論文もインパクトのある論文top10にあった。

僕らは慢性腎不全で血液透析を腎代替療法として選択した患者で、慣習的に血液透析を始めるときにシャントの増設を行い血液透析を始める。

シャント増設の時期に関しては、個人個人の考えがあるとは思うが、自分はGFRが10を切るのが数回持続する様であれば提案する様にしている。

透析開始時期に関しては日本透析学会のステートメントでは、腎不全に伴う症状がない場合でもGFR<2を下回るまでには透析を開始するのが望ましいとなっている。

透析開始時期に関しては有名な論文としては2010年のNEJMの論文であろう。
この論文は
1) GFR=10-14ml/min での早期導入と 2) GFR=5-7ml/min での晩期導入
の2つのグループにランダムに患者を振り分け3年以上観察した結果、死亡率、合併症に関して差は見られなかったというものである。半分近くが腹膜透析患者であったりと実際のpopulationと異なる部分はありますが、とても重要な論文です。



シャントの増設をするときに患者さんは
「もう少し粘らせてください、様子を見させてください」
とシャントの増設が遅れてカテーテルで透析を行い、その時にシャント増設をする患者がいることは事実である。
なんとなくはカテーテルの透析は死亡率高いなとわかってはいたが、今回の論文は重要である。

この研究はコホート研究で115425人の67歳以上の血液透析患者で検討している。
比較としては
1)シャント増設、2)シャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入、3)カテーテルで導入の3群を比較している。
結果は
シャント群とカテーテル群の比較:
58ヶ月の段階でシャント増設群ではカテーテル群に比較して死亡率が少なかったと報告している(HR:0.50,95%信頼区間 0.48-0.52 p<0.001)。
死亡率もシャント増設群では6ヶ月で9%,12ヶ月で17%,24ヶ月で31%なのに対して、カテーテル挿入群では6ヶ月で32%,12ヶ月で46%,24ヶ月で62%であった。

シャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群とカテーテルで導入の群の比較:
結果は
58ヶ月の段階でシャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群ではカテーテル群に比較して死亡率が少なかったと報告している(HR:0.66,95%信頼区間 0.64-0.68 p<0.001)。
死亡率もシャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群では6ヶ月で15%,12ヶ月で25%,24ヶ月で42%なのに対して、カテーテル挿入群では6ヶ月で32%,12ヶ月で46%,24ヶ月で62%であった。

なので、僕らはこのデータなどもしっかりと参考にして患者へのアクセスを考えていく必要があるし、しっかりとシャント増設を勧めることが重要である。