2016/10/25

薬物中毒について考えてみる(総論)

今日は少し中毒に関して触れてみたいです。
中毒は腎臓内科にとって必要な知識です。

急に集中治療領域に薬物中毒で入院した人に透析をやってくれない?と言われて、しっかりと状況の判断ややる適応があるのかを考えることは非常に重要です。

透析をやるということは、患者さんに透析カテーテルを留置しなくてはならないし、それに付随する合併症も危惧しなくてはならない。なので、必要であればやる!必要ならやらない重要な判断になります。

中毒に関しては透析を考える上で重要な項目が3つあります。
1つが「分布容積」です。分布容積は低いもののほうが除去に向いています。つまり、組織よりも血液や細胞外液に分布しやすいものには有効です。

分布容積は[血中濃度]分の[体重当たりの体内の薬物総量]です。均等に分布していれば1です。血液に多く分布していれば相対的に分母が大きくなるから、1より小さくなります。
分布容積が1より小さいものには血液浄化法が有効な可能性があります。
逆に、分布容積が1より大きく、血液の方にあまり分布していなければ意味がないです。
 
半減期があまり短くても意味がありません。血液浄化法は数時間かけて実施されます。極端に言えば、半減期が数分なものを何時間もかけてやっても意味がありません。

中毒で用いる血液透析方法は血液吸着法と血液透析法があります。
血液吸着法で用いられているカラムの中には先ほど出てきた活性炭がビーズ状になって詰まっています。活性炭が吸着剤で、薬毒物が吸着されて血液はきれいになります。

2つ目はたんぱく結合率です。
たんぱく質に結合している薬や毒物でも吸着剤と接触するとはぎ取られます。
血液吸着法の場合は分子量やたんぱく結合率の影響をあまり受けません。たんぱく結合率が95%以内であればだいたい大丈夫と言われています。分子量の影響を受けず、半減期がある程度長くて、分布容積が小さくてより血液や細胞外液に分布しているものが有効です。国際的に適応があるとされているのは、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトリン、テオフィリンです。
血液透析法は血液吸着と異なりタンパク結合率の影響を受けます。剥ぎ取れないので。

3つ目は分子量が小さい、1000ダルトン未満の物質です
国際的に適応があるとされているのは、メタノール、エチレングリコール、アスピリン、リチウムです。いずれも分子量が小さく、半減期はある程度長い。分布容積は小さくて、タンパク結合率はほとんどのものがゼロです。活性炭に吸着されないものがほとんどです。

中毒に関しては
覚え方として「青魚入りのキャット・ミール(CAT-MEAL)で血がサラサラ(浄化)」と覚えるといいです。

血液吸着法の適応がある薬毒物は「CAT」で覚えます。
C」はカルバマゼピン、
「A」は抗けいれん薬(anticonvulsants)です。フェノバルビタール、フェニトリンです。カルバマゼピンも含まれます。
「T」はテオフィリンです。
Cの中にカフェインも書いていますが、これはあまり今のところ文献的なエビデンスはありません。しかしながら、テオフィリンとカフェインは同じキサンチン誘導体で、構造式も薬物動態もとても似ています。カフェインも恐らく効くだろうと考えています。

血液透析法の適応がある薬毒物は「MEAL」で覚えます。「M」はメタノール、「E」はエチレングリコール、「A」はアスピリン、「L」はリチウムです

今回リチウム中毒について書こうと思ったら、総論で終わっていましました。。

腎臓内科は本当に幅広い領域をカバーしますね。本当に楽しい分野だと思いますが、日々勉強ですね。。。

下記は熊本大学の資料を添付させていただいてます。とてもわかりやすいです。
HA:血液吸着、HD:血液透析です。