2012/06/21

Thin Red Line between SLK and LTA 4/4

 このようにさまざまな立場からさまざまな希望があるのに、データは完全でないし、それでも肝臓のみ、肝腎同時移植、という決断を日々くださなければならない。それで、偉い人たち(国内大規模移植センター長、腎臓内科、肝臓内科、移植外科など)が集まって会議を開いた。2006年に最初に集まり、2007年にもう一度集まり、コンセンサスなるものを提唱した(AJT 2008 8 2243)。

 それによれば、①末期肝臓病患者でCKD(GFR <30)、②AKI including HRSでクレアチニンが2mg/dl以上または透析を8週間以上必要としている、③末期肝臓病患者のCKDで、腎生検が30%以上の糸球体硬化あるいは30%以上の間質線維化を示している、の三点は例外的に自動的にSLKとしてもよいだろう、ということだった(もう一つ、④末期腎不全の透析患者の無症状な肝硬変で圧較差10mmHg以上の門脈圧亢進がある場合、というのもあるが、これは別のトピックなので又の機会に)。

 まとめると、①SLKはMELD導入以後増えているが、一方で何千人の腎臓病患者が腎臓を待ちながら毎年亡くなっている。②CKD(GFR <30)あるいは原因は何であれ透析を8週間以上必要としていればSLKをというコンセンサスは現行ではリーズナブルだろう(根拠は乏しいが)。③SLKにリストすると、うちのエリアではMELD29ルール(臓器の融通)に落ち度があるせいで腎臓がついてこないので、瀕死の患者さんは肝臓単独にくらべて長く待たされるかもしれない。④全国レベルでは政治やさまざまな立場の違いからまとまりにくいだろうが、一病院のレベルでなら絶え間なく議論してデータを集めていくことで、よりよいコンセンサスが作れるかもしれない。

 以上のような内容だった。よくもまあ、これだけの内容を30分で話せたものだ。事前に、移植腎臓内科スタッフ二人による査読を受けたことが助けになった。論文を紹介するのに、どのような情報が必要で、どのような結論と批判的考察をすべきかも少しわかるようになった。いままでこれが中々できなかったのだ、つい鵜呑みにしてしまって。移植外科、肝臓内科のスタッフも来てくれて、彼らの意見も聴けたのがよかった。

 ちょっと悲しかったのは、一般腎臓内科のスタッフが余り来ず、来ても「自分には関係ない」という感じであまり発言が聞けなかったことだ。しかし逆に、移植腎臓内科のスタッフで一般腎臓内科のGrand Roundにはあまり来ないか発言しない人もいる。こうしてフェローのあいだに全方向に蓄積した知識と経験がとても重要で、一旦フェローを終えれば自分の専門以外は(とくに移植は、それをキャリアの一部に選ばない限りは)疎くなるということだ。私は、できればどちらもと考えているのであるが。終わり。