2018年2月13日火曜日

腎臓内科にとっての糖尿病② : 薬物療法の介入について

今回は糖尿病の患者さんの薬物療法の介入について触れたいと思う。


糖尿病の薬は本当に日進月歩で色々と薬が開発されている。
そこのところも踏まえて書ければと思う。
今回、ADAのを中心に話すが、おおまかな流れは下図のようになっている。
・HbA1cの値によって
 -9%未満:単剤治療を考慮
 -9%以上:2剤治療を考慮
 -10%以上で血糖値が300を超える場合:3剤の治療を考慮
治療効果判定は大体3-6か月毎で評価を行う。
また、9%以上ではとくにASCVDリスクをしっかりと評価することが重要である!
ADAガイドより
また、ここで治療の第一選択薬にメトホルミンが必ず入っている。


メトホルミンが第一選択になる理由としては心血管死を減らすエビデンスがあることや安価であること、単独では低血糖をきたさず、体重増加を来さない点などが優れていると言える。
また、最近では岡山大学などからも悪性腫瘍の抑制にはたらくのではないか(制御性T細胞の増加と機能を抑制する)ことも報告されている。


各薬剤の効果に関しては下記のようになっている。



ADAガイドより


ここで、SGLT2阻害薬は最近様々なstudyで心や腎への保護効果が言われている。




各薬剤に関してまとめた表をのせる。
糖尿病ガイドより


ここでは、腎機能障害の部分に印をつけた。
メトホルミンと主に使うものに関してつけている。

ADAガイドより
各薬剤に関しては、それぞれの特徴がある。


腎機能低下時に使用できる薬剤は極端に少なくなってくる。とくに第一選択のメトホルミンに関しても同様に使用が困難になる。


メトホルミンが腎機能低下で使用を控えた方がいい理由は乳酸アシドーシスであるが発症頻度はまれなことも有名である。
日本ではメトホルミンの最大投与量が2250mgであり、乳酸アシドーシスの発症例は50例で、10例が死亡している(発症頻度は1.9例/10万人と低い)。


手術直後、肝硬変、腎機能低下、感染症などは使用を控えるべきとなっている。
また、高齢者は乳酸アシドーシスの頻度が高くなるため注意が必要である、


日本のメトホルミン使用の推奨に関しては、下記のようになる。
腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。




では、乳酸アシドーシスも頻度が低いし、CKD stage5の人はダメだとして、CKDstage3や4の人はどうなの?というものを見た研究を次のブログでお話ししようと思う。




2018年2月12日月曜日

腎臓内科にとっての糖尿病 ① :まずは基礎

腎臓内科をしていると糖尿病の患者さんの診察も必然的に多くなる。また、腎機能が悪くなった時に薬の相談も受ける頻度が増えるのではないかと思う。
その時にやはり相談を受ける頻度として上位に来るのは下記のようなコンサルトではないか?


A先生「慢性腎不全の患者さんで患者さんの病態とかを考えると第一選択になっているメトホルミン製剤を使用したいのですが、乳酸アシドーシスはどこまで気にしなくてはならないのですか?どこの腎不全から使っちゃだめですか?」


少しこのあたりに関しての知識の整理ができればと思う。


まず、ガイドラインから振り返ってみる。
日本でも毎年糖尿病治療ガイドというものが出されており、非常に安価に情報をUP dateすることができる。


米国ではADAが毎年standard medical care in DMを出しており、今年も1月に改訂されている。


まず、糖尿病治療を行うときに重要なことは
①コントロール目標
②介入(今回は薬物中心)
③合併症管理


である。


①まずはコントロール目標である。
下図はADAのものであるが、目標としてはHbA1c<7.0未満である。
ちなみに7.0がどれくらいの血糖なのかは平均血糖で154程度である。これをみてこれを調べていて、このくらいのHbA1cでこのくらいの血糖なのかと知ることができたのは本当に勉強になった。
ADAガイドラインより
続いて日本では高齢者なども分けて下記のような目標値になっている。
高齢者のポイントはその人のADLや認知機能や合併症などを考慮しての数値目標になっている。
糖尿病ガイドより
糖尿病ガイドより
ただ、腎不全患者では腎性貧血などに伴い著明な貧血になった場合には血糖管理目標に関しては注意をする。その際にはGA(グリコアルブミン)を用いた管理をした方がいいという報告が多い。




次回に②を簡単にお話をして、最後に文献を用いてメトホルミンに関しての有用性などをお話ししたい。



2018年2月7日水曜日

腎移植後の高血圧~どのようにして治療する?~

まず、腎移植後の高血圧に関しての血圧管理目標については、2017年度のACC/AHAのガイドラインでも130/80mmHg未満の推奨である。


降圧目標に関しては、ACC/AHAのガイドラインが新しくでて、日本のガイドラインも今後反映されるかもしれないが分かりづらいので下図を添付する。

Neph JCより引用
高血圧の患者の治療にあたって、まずは
①カルシニューリン阻害薬の内服で血中濃度はどうか?を確認する。
②薬剤でのコントロールを行う。
・カルシウム拮抗薬(CCB)
第一選択として好まれることが多い。
理由:降圧効果が確立しており、CNIによる血管収縮を最小限にするため。
Up To date より
カルシウム拮抗薬については2009年のsystematic reviewでも効果が証明されている。
この報告ではプラセボ、ACE-Iに比べて降圧効果としてはCCBが一番効果があったというものである。
カルシウム拮抗薬はジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に分かれ、特に非ジヒドロピリジン系に関しては薬剤との相互作用に注意をする必要がある。
-ジヒドロピリジン系:アムロジピンヘシル酸塩、ペルジピンなど
-非ジヒドロピリジン系:ジルチアゼム塩酸塩、ベラパミル塩酸塩など


非ジヒドロピリジン系に関してはCYP3A/4の阻害を行う。
CYP3A/4はCNIやmTOR阻害薬の代謝に重要であり、非ジヒドロピリジン系の使用で血中濃度が上昇してしまうので注意する。


・ACE-I、ARB
追加薬として使用は検討すべきである。動物実験レベルではあるが、シクロスポリンによる腎症の予防に働く。
ACE-I/ARBに関してはCKDには有用であることが証明されているが、移植後の有用性の証明は乏しい。そして、いくつかの良くない点も指摘されている。
a)シクロスポリンとの併用で腎血管への影響を来し、GFRの低下をおこす。
b)シクロスポリン/タクロリムスは尿中K排泄低下を来し、高K傾向になりやすく、ACE-I/ARB使用でさらなる高Kになるリスクがある
c)ACE-Iによって移植患者の貧血を惹起する(5-10%に生じる)。それがシクロスポリン内服で顕著化する。

いい点としてはARBによって移植後の尿酸低下をもたらし痛風の予防や降圧・タンパク尿減少に役立つ。

なので、ACE-I/ARBは使用するにしても移植後すぐではなく、3-6か月以上たって安定した状態のほうが望ましい。

薬剤に関しては、やはり薬剤相互作用をしっかりと確認しておくことが非常に重要である。それに関しては、下の表を参考にしていただきたい!
JASN 2015より

移植の高血圧管理は非常に重要である。
レシピエントにとってもドナーにとっても腎臓は非常に大切であり、我々もしっかり高血圧の管理を知っておくことが重要である。







2018年2月1日木曜日

腎移植後患者の高血圧 〜まずはしっかりと理解!〜

腎移植後に高血圧で悩むことは多い。
報告では、大人では50-80%の頻度で生じ、子供では47-82%に生じるとされている。
特に高血圧のコントロールができないと心血管死亡率や移植腎生着率の低下につながる。

なので、しっかりと血圧コントロールを行うことは非常に重要である。

★血圧を上げるリスクファクター
・体重の増加
 →移植後もしっかりと体重コントロールを継続することが重要である。

・腎動脈狭窄(TRAS :transplant renal artery stenosis)
 →移植後どの時期に生じてもいいが、多くは移植後3ヶ月〜2年の間に生じる。生じる
  リスクとしては、手術が困難の場合・強い動脈硬化・サイトメガロウイルス感染・
  腎機能の回復が遅いものがある。
  診断:血管造影、腎血管エコー、MRI検査やCT検査が用いられる。腎血管エコーでは
                   最大収縮速度≧2.5m/secが感度・特異度が非常に高く相関性がある。
  治療:血管形成術や手術。血管形成術でバルーンを広げるだけで80%の狭窄例で成功
     するが20%で再狭窄をきたす。ステントを置く症例は狭窄を繰り返す症例に
     用いる。外科手術は成功率は60-90%程度であるが、再狭窄を10%に認める。

・拒絶(急性拒絶反応・抗体関連拒絶反応など)
 →タンパク尿・血尿などの尿検査や腎機能なども含めしっかりとしたフォローをする。

・薬物(ステロイド、カルシニューリン阻害薬)
 →ステロイド:通常は容量をすぐに落とすので慢性的な高血圧になるリスクとしては低
  い。RCTでも5mgのステロイド維持量とステロイドなしの群で比較しても差が出なかっ
  たという報告がある。
 →カルシニューリン阻害薬:シクロスポリンとタクロリムスではシクロスポリンの方が
  高血圧の合併症は高い。機序としてはRAA系の増加は一因である。シクロスポリンで
  は全身の血管抵抗や腎血管抵抗の増大を生じさせることによって高血圧を生じる。ま
  た、両薬剤ともNa再吸収を亢進させNa貯留を起こす。

AJKD 2011

腎移植直後は患者さんは体液過剰の状態にあり高血圧は、自然に利尿がついて体液過剰が改善すれば高血圧のコントロールもできてくる。

今回は、移植後の高血圧に関しての前半の部分に触れた。次は治療はどうするかを触れたい。


2018年1月31日水曜日

あなたのネフロンを数えましょう 4

 このシリーズ初回に紹介した論文(NEJM 2017 376 2349)では、生体腎ドナーのSNGFRを測ってみると、年代ごとに差がなかった(図は表2より作成;70歳以上についてはセレクション・バイアスだろうと言っている)。




 SNGFRを保ちながら少しずつネフロンが減って、全体のGFRが下がっていくのは、老化であって病気ではないということだろうか?CKDのヒート・マップが広まり始めた頃、「高齢者で、蛋白尿などもなく、eGFRだけでCKD3期になった方は、ほんとうにCKDと呼ぶべきなのか?」という議論があった。SNGFRの概念は、この問題をより明確にしてくれるかもしれない。

 また、上図で70-75歳のSNGFRが際だって高いのはエラーだというが、高齢者・後期高齢者のネフロン数、SNGFRがどのように推移するのかはまだ調べられていないのかもしれない。ネフロンエンダウメントというと子宮内・妊娠中のイベント、出生体重など出産前後の話が多いが、老年医学についても、剖検症例などから学べることがあるかもしれない。

・ ・ ・

 ここまで、ネフロン数、ネフロンエンダウメント、SNGFRなどについて基本的なことを概述してきた。今回の切り口に含まれなかった、出生前後にネフロン数をさげるイベント・機序・遺伝子などについて、また、ネフロンを増やす試み(再生医学が発達すれば自分のiPS細胞からつくったネフロンを移植することも可能になるかもしれない)などについて詳しく知りたい方は、成書など参照されたい。機会があれば触れられると思う。

 ネフロンにも命(写真はカワセミ)にも限りがある。かけがえのない日々を大切に送りたいものだ。



2018年1月30日火曜日

あなたのネフロンを数えましょう 3

 前回、「ネフロンの数が減っても、一個一個のネフロンが何割増かで働けば、GFRは保たれるのではないか?」という話をした。ここでいう一個一個のネフロンの働きを、シングル・ネフロン・GFR(SNGFR)という。

 SNGFRは、理論上は輸入細動脈、輸出細動脈の圧(静水圧差ΔP、浸透圧πcap)や糸球体のろ過係数Kfなどでスターリンの法則に基づいて以下のように決められる。

SNGFR = Kf x (ΔP - πcap)

 これはこれで、血圧が下がっても輸入細動脈を締める(ΔPをあげる)ことでGFRを維持する、など糸球体を一個取り出してその調節機能を研究するときには役立つ式だ。

 しかし、あなたのネフロン何十万個それぞれのSNGFRがどんなかを一個一個測るのは今のところ現実には無理だ。そこで、GFRをネフロン数で割った平均のSNGFRが代用される。

 SNGFR = GFR / ネフロン数

 本稿の冒頭であげた問題提起にあるように、実際ネフロン数の小さい(と思われる、低出生体重の)動物モデルでは、SNGFRが高くなっているので全体のGFRはかわらない(Hypertens 2003 41 457など)。

 しかし、このようにSNGFRを増やして代償した動物たちを観察すると、高血圧だったり、尿たんぱくが出ていたり、困ったことも起きていた。それで現在では、SNGFRが高くなる→腎臓の負担が増える→ネフロンがさらに(糸球体硬化などで)失われる→さらにSNGFRが高くなる、という悪循環が考えられている(図はBrenner9版22章より)。




 あなたのネフロンを数えましょうの初回に紹介した論文(NEJM 2017 376 2349)も、その流れに符合するものだ。続く(写真はOfficially missing youを2012年にアレンジしてカバーした韓国のGeeksとSoyou)。



2018年1月29日月曜日

マイフォーティック (Mycophenolate sodium)~免疫抑制剤~

 移植の外来をしていて、海外で移植をしてその後のフォローをするときにしばしば内服薬で「プログラフ、プレドニン、マイフォーティック」の内服をしているという場面に遭遇する事が多い。




 当初はマイフォーティックと聞いて何かのアニメなのか?と思ってしまった。このマイフォーティックに関してまとめたいと思う。

 マイフォーテックはMycophenolate sodiumの事であり、まず特徴としてはMMFに比べて腸管での吸収を遅くしている特徴がある。

 MMFを内服していて一定頻度で困るのは消化器症状(下痢)である。この消化器症状を少なくすることは患者の内服コンプライアンスを上げる上で重要である。

 マイフォーティックは移植後の下痢の症状などをMMFに比べて優位に減らしたという報告がされている(Transplant Proc 2009)。しかし、現時点ではマイフォーティックとMMFで移植患者の有用性の違いに関しては報告されていない(Transplant Proc 2010)。

 日本で患者さんがMMFで下痢をした場合に、下痢止めを処方したり、それでも症状が治まらなければ、MMFをAZA(イムラン)に変更したりする。しかし、AZAのがGraft survivalは長期で見た場合に悪い事は既知の事実であり、なるべくならMMFを飲ませ続けたい(短期は違いは少ないので短期間だけの変更ならばいいかもしれないが)。




 そういう点でマイフォーテックはいい薬である。日本ではないため、患者さんにMMFに変更することを伝え、またそれにより下痢の出現があるかもしれない事を忘れずに伝える必要性がある。量に関しては180mgのマイフォーティックと250mgのMMFが同効果であるとされている。

 もうすぐ東京オリンピックも近づいている。その時に海外で移植した患者さんが急に来院する可能性もあり、内服薬に関してもしっかりと理解する事は重要である。